この10年、毎月毎月お芝居を創ったり、作曲したり、教えたりなんかもしてきた訳だけれども、コロナ禍を機に劇場での活動を一旦休止してみた。我ながら呆れるほどその判断は早かった。
まあ、要するに前々から考えていた事なのだ。そういった意味ではコロナ禍を「渡りに船!」とばかりに即、実行に移したというのが本当のところ。
もちろん、コロナなんて病が流行ろうなどとは予想もしていなかったので、本来ならば2020年4月の楽劇座10周年記念公演を終えたら、しばらく芝居小屋をライブハウス化し、前衛的なライブ活動等、音楽絡みの仕事をした上で、晴れて劇場運営から解放されようと企んで?いたのだ。2020年1〜2月の朗読とシンセサイザー による公演なんかは、その後の劇場運営イメージの先取りだった訳だ。
で、活動をセーブして何をしたかったのかと言えば、もっと自分自身の勉強時間を確保したかったというのが本音。もう少し詳しく言うと、音楽と学術研究に使える時間を増やしたかったのだ。毎月新作(再演改作上演含む)上演するということは、土日祝日休みなし、午前中から深夜までの時間を演劇に費やしていた訳で、その他の時間を生み出すのは字の如く”至難の技”だったのだ。
もともと作曲家としてキャリアをスタートさせたこともあるが、ポップスでは、かつてやっていたサウンドプロデュースでやってみたいことも幾つかあったし、いわゆるクラシック音楽で言うところの現代音楽作品をじっくり作曲する時間も欲しかった。
要するに、人生の残り時間を”やりがいのある仕事”だけに費やしたいと考えている次第である。
まあ、実際のところは”思惑通りに行かないのが人生”と言ったところだろうか。日々、相変わらず様々なことに追われてしまっている。だが、以前よりも遥かに ”ゆっくり考える時間” が増えたのは事実。
で、やってみたいことに追加された ”演劇に関する項目” がある。
それは、お芝居をやってみたかったのに諦めざるをえなかった人たちに再挑戦の場を作ること。
今はYouTubeもあれば、制作ノウハウとやる気さえあれば上演場所にも事欠かない。
30歳、40歳はもちろんだが、50歳や60歳過ぎてから演じたり、脚本、演出を始めても決して遅くはない。むしろ、商業的なある種のパターン内のゲームに明け暮れるプロの演劇人よりも、よっぽど面白いものが出来るかもしれない。
地方在住の方なんかは一つの可能性となるだろう。
上演場所(場所さえあれば、いわゆる劇場じゃなくても良い)は都心よりも豊富だろうから、演劇づくりに必要なノウハウさえ得ることが出来れば、演劇作品をコンスタントに制作する環境はむしろ都会よりも揃っている。
学び続けることを怠らず、そうした環境の利点を活かすならば10年も続ければ立派な演劇人だ。
今はコロナ禍ということもあり、実際に人が集まる演劇の稽古には問題があると思うが、zoom等、文明の力=パソコンを使えばそうした人たちに演技、脚本、演出、作曲のノウハウを提供することも出来る。
本当にやりたい人に教えることが出来るならば、それは胸を張って”やりがいのある仕事”と言えよう。
そうした ”やりがいのある仕事” をライフワークとして行ければなあ などと思いを巡らせている私。
執筆・撮影:関口純
(c)Rrose Sélavy