楽劇座『ルーシー・フラワーズ』シリーズにおいて、見どころの一つである衣装。
ここでは一人一人に注目して、衣装の魅力を解説していこうと思います。
第8回は前回に引き続き、ルー(演:五條なつき)さん後編です!
前編をCHECK
【衣装解説】『ルーシー・フラワーズ』のワードローブ <第7回 ルー>①
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アカデミックに! イートンカラーとリボンタイ
後編では全身をコーディネートするアイテムたちをご紹介していきましょう。今日からあなたもLet's ルー・ルック!
まずはトップスから。カーディガンは前回詳しく解説しましたが、それに合わせられている襟にご注目! インナーの襟はシンプルなイートンカラー(幅の広いフラットな角襟)です。
シーさんはレースや刺繍などの装飾が多くふんわりとした印象でしたが、ルーさんは装飾は無く輪郭もくっきり。そこへ黒いリボンをタイにすることで印象をさらに引き締めています。
ここでひとつ、客席からは知り得ない(というか特に知る必要もない)ルーさんの襟にまつわる秘密をお教えしましょう。実はこの襟……ブラウスではなくつけ襟なんです!
ちなみにイートンカラーの名称の元になったイートン校というイギリスの名門男子校があるのですが、そこのスクールドレス(制服)もつけ襟とリボン状のタイを付けるんです。
読書好きでインテリジェントなルーの衣装と、名門パブリックスクールの制服に共通点があるというのは意外な発見ですね! (ルーさんがどんな本を読んでいるかは、ぜひめいる先生による『キャラクター紹介・ルー編』をご覧下さい! )
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アクティブに! プリーツスカートとペチコート
続いてボトムス。揺れ感の大きいミニ丈のプリーツスカートはルーさんの元気な動きによく映えます。
ペチコートがあるから飛んだり跳ねたり椅子に飛び乗ったりしても大丈夫! (お行儀は悪い) スカートの裾からレースが見える丈がとっても可愛いんです。
スカートで注目したいのが、チェック系柄のプリーツスカートであるという点。襟にも同じことが言えますが、ルーさんの衣装は意外と直線の要素が多いんです。
直線的な要素を取り入れたファッションは「フォーマル寄り」「マニッシュ」「スタイリッシュ」などの印象を与えやすいといいます。
シーさんの衣装がフェミニン、ナチュラル、柔らかいイメージだったのとは対照的です。まさに「ふたりでひとつ」ですね。
ちなみに先ほどしれっと『チェック系柄』というアバウトな表現をしましたが、ルーさんのスカートはよく見ると奥行きのある複雑な柄です。
チェックの格子の上から振り撒いたように宝石やブーケが散らばっている幻想的なプリント。アカデミック美術のタッチとも言えます。(やや強引) スカートの柄が印象派タッチだったシーさんとはこんなところでも対比になっている……のかもしれません。(やや強引)
自由に歌えば足取りも軽く♪
足元は黒タイツ。背景のメイン色が赤なことは前回も触れましたが、歴代全てのキャラクターの中でも、恐らくルーはテーブルより上に脚が上がる機会が誰よりも多いので黒タイツはいろんな意味でうってつけですね! (お行儀は悪い)
そして、カーディガンと同じく真っ赤なシューズ。「地に足がついてない感じがするから無重力とハイヒールは嫌い」という発言にもある通り、フラットソールです。
ちなみにこのパンプス、実はシリーズ途中で代替わりしています。動きの激しい役は靴の負担も大きいですし、長く続いたシリーズならではですね。
先代はデザインが少し違うのですが、五條なつきさんが上手く似たデザインを合わせていらっしゃるので気付かなかった方がほとんどではないでしょうか。
余談ですが、ルーシーに限らず靴は衣装の中でも管理や調整が難しいアイテムです。服や小物と比べて「サイズがシビア」「基本的に全員必要」「消耗が激しい」「応急修理が難しい」などがその理由です。
実際「衣装は全部借り物だけど靴はキャストの私物」というケースはままあります。コスト面だけではなく安全性や管理の面でも理由があるわけですね。
決して全体のメインにはならないけれど、その役の歩んできた(まさに文字通り! )歴史や拘りが表れる『靴』という衣装が僕はとても好きです。
ピンクの頭の七不思議
そしてルーと言えば忘れちゃいけないピンクのウィッグ! 実はシーさんと微妙にシルエットが違うのをご存じでしたか?
ルーシーフラワーズは何年も続く人気シリーズですが、ルーの頭の形は初期からずっとこのまん丸をキープしています。
そう、演じる五條なつきさんの髪型がロングの時もショートの時も、ルーの頭はずっと同じ形をしているのです。ウィッグを被ったことのある方はおわかり頂けると思いますが、これ普通はあり得ない事です。
……とある筋から入手した情報によると、なつきさんの髪型に合わせて頭部の『中身』を変えている……とかなんとか。う~ん、『中身』って何なんでしょう? 「お皿の秘密」と同じくらい気になります。
きっと『夢見る私の好奇心♡』が詰まっているんでしょうね。
ウィッグと言えば、最後にこんなエピソードを。なつきさんが他の演目でこのウィッグを使用していた時のことだそうです。
楽屋で、ウィッグをわざと後ろにずらして被ってイケてるポーズをキメたなつきさんの姿を、作演出の関口純さんが目撃してインスピレーションを受け、それがきっかけでルーシーが産まれたという何とも言えない逸話を聞いたことがあります。(信じる信じないはあなた次第です)
何故なつきさんがそんなことをしていたのかは全くの謎なのですが、言ってみれば、なつきさんのお茶目さがなければルーのキャラクターはおろかルーシーフラワーズという作品さえも産まれなかったかもしれないのです。
背景と同じ色をメインに使いながらもルーの衣装が独自の存在感を発揮しているのは、なつきさんの豊かなセンスと遊び心が全身に溢れているからなんでしょうね。
ルーのワードローブ・まとめ
あなたとルーシーフラワーズのワードローブ
さて、八の字眉幸子さんから始まったこの衣装解説も、ついにルーさんまで紹介しました。ルーシー・フラワーズの世界に馴染みがある方もそうでない方も、お付き合い頂きありがとうございました。
人物ごとの解説記事はいったんひと区切りですが、ルーシー・フラワーズの世界は今後も展開し、現在はオンライン公演が控えております。ここまで読んで下さったあなたなら衣装の解像度が何倍にも上がっているはずです! ぜひ登場人物が身に着けて動く姿を確かめてみて下さい。
『衣装にはその人物が様々な形で表れる』という事を知った今、新しい楽しみ方の扉が開いたと思います。もちろんそれはルーシー・フラワーズ以外の世界でも同じこと。
まずはオンライン公演、どうぞ楽しんでご覧下さい。
そしてあなたがこれからの毎日で着る服が、あなたらしさが表れた『あなたにうってつけの衣装』でありますように!
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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy