ものづくりの教科書 演劇小道具工房

【演劇小道具工房/第2回】ハロウィンコスプレにもぴったり♡動物や悪魔に!動きが映える「しっぽ」の作り方<後編>

こんにちは、シンディこと大向しんじです。ここ『演劇小道具工房』ではお芝居で使える小道具のつくり方や、これまでに作ったアイテムたちなんかをご紹介します。

第2回は、体に装着して動ける「動物しっぽのつくり方・後編」。動物役の舞台衣装にはもちろん、ハロウィンやコスプレにも役立ちます!

※今回の記事は「動物しっぽのつくり方・前編」の続きです。前編はこちらからご覧下さい。

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【演劇小道具工房/第1回】ハロウィンコスプレにもぴったり♡動物や悪魔に!動きが映える「しっぽ」の作り方<前編>

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STEP5 しっぽの外装を作ろう

前回まででしっぽの中身がほぼ完成しました。続いてしっぽの外側を作っていきます。

ここの工程はどんなしっぽを作るかによって作業内容や使用素材が異なります。今はシンプルなネコのしっぽを作りますが、ぜひお好みのしっぽを作ってみて下さいね。

ここでは毛足1cm程度のストレッチファーを使用します。12cm×95cmで裁断しましょう。筒状に縫って表に返し、しっぽの中身に被せて、先端を縫い縮めて閉じます。

もしネズミや悪魔など黒くて細いしっぽにする場合、スポンジグリップの表面をそのまま活かして先端など一部だけを加工する形式でもOKです。その場合、素材の個体差や仕上がりイメージにもよるのでご自身で確認しながらご判断下さいね。

余談 ファー生地を使うなら

ファー生地を使用する場合は取り扱いにコツがいるので、初めて使う場合は切り方や縫い方などに注意しましょう。事前に確認しておくのも良いと思います。

ざっくりよくある注意ポイントを言うと……

・布と一緒に横の方から伸びてる毛も切っちゃってザンバラみたいになっちゃう!
 →ひっくり返して裏側から切るんだ! 毛を切らないように布地だけ切るんだ! 具体的にはハサミを少しづつ入れて切るか、カッターの刃を浅く当てて切るんだ! どっちがやり易いかはぶっちゃけ人によるぜ! (シンディさんはカッター派)

裏側から布地だけを切るようにします。

・毛を一緒に縫い込んじゃう!
 →縫う周辺の毛は事前によくかき分けておくんだ! そこ周辺だけ短くカットするのもいいぞ! それでも巻き込んでしまう? 表に返してからブラシや目打ち(アイスピックみたいな手芸ツール)でかき出すんだ!

縫いしろ部分(縫い目の外の表に出ないところ)の毛をカットすると、巻き込み防止になるだけでなく表に返した形も綺麗です。

縫い目に巻き込まれた毛は尖った物やブラシ等で掻き出します。短い毛なら歯ブラシでも。

・裁断する端から毛が抜けて、部屋中が毛だらけでえらいことに!
 →これはある程度は仕方がないぜ! 気をつけるしかないぜ! マスクと掃除機と心の準備は必ずしておけ!

……こんな感じです。

普通の布地と比べて多少コツはいりますが、ファー素材を使うと一気に動物らしくなります。加工していてもテンションが上がるので、ぜひ使ってみて下さいね!

STEP6 しっぽの根元部分を加工しよう

さてお次はしっぽの根元、切り開いた部分のワイヤーを体に沿うように形を整えます。

撚ったワイヤーを使っている場合は平面状に開いてあればOKです。(竹トンボみたいな形)

クッションワイヤーを使用している場合は開いた部分が2本なので、伸びた「線」の状態だと上下の向きに支える力が弱くなります。「面」で支えられるようにS字を描くように曲げてしまいましょう。

開いたゴムにポイントで縫い付けておくとより強度が増すので安心です。

STEP7 腰に当たる土台のパーツを作ろう

続いて同じくしっぽの根元、腰に当たる土台になるパーツを用意します。

土台①…9cm×12cmのウレタンボード(これが一番内側、体に接するパーツになります)
土台②…同サイズで中央に直径3cmの穴が開いたウレタンボード(取り付けやすくするために穴から外側まで切り込みを入れておきます)
土台③…同サイズで中央に×型の切り込みを入れたしっぽ表面の布地

の3つの部品を切り出します。この時ウエストに取り付けるためのゴムベルトも一緒に用意しておきましょう。

土台②には切り込みを入れておくと作業しやすいです。

STEP8 土台部分を組み立てよう

まずファーのパーツを取り付けます。×型に入れている切込み部分に尻尾を通して根元部分を覆うように縫い付けます。この時「装着したとき横長の長方形になる」よう向きに気を付けて取り付けます。

続いて、「穴が無いウレタンボード」「尻尾の開いた部分」「ゴムベルト」「穴が開いたウレタンボード」「しっぽ表面の生地」の順番に接着します。

言葉で書くとわかりにくいと思うので図解も置いておきますね。

内側から順に「土台①(穴が無いウレタンボード)」があって、これが「開いたしっぽ」を支えてくれます。ワイヤーが直接体に当たるのを防ぐ役割もあります。

その外側から「ウエストベルト」を取り付けることで、体に取り付けるためのベルトが同時にしっぽの根元を押さえてくれます。「土台②(穴が開いたウレタンボード)」はそれらすべての補強です。

「土台③(しっぽ表面の生地)」は根元がチラ見えした時に見苦しくないためのの目隠しです。しっぽの根元があまり見えない衣装の時などは必要ない場合もあります。その時はしっぽの生地は根元に接着、穴ありウレタンボードの色を目立たない物にするなどして調整して下さい。

余談 接着剤を使うなら

あとここで使う接着剤、僕はセメダインのG17という物を使用していますが、これを選んだ理由は主に2点です。

・ウレタン、ゴム、布、全ての素材に強い強度で接着できること(とくに前者2つ)
・水に強いこと。

接着剤はたくさん種類がありますが、基本的に素材と使用環境で選びます。舞台で身につける物の場合は場合によって「耐水性」にも気を付けた方が良いです。

「どうして舞台で耐水性?」と思われるかもしれませんが、舞台では汗をたくさんかきます。こういった身に着ける物の場合、汗を含んだ衣装の中で疑似的な水没状態になることも珍しくありません。あくまで種類によるものの、水性の接着剤は乾いた後でも水に長時間浸かっていると溶け出してくる物があります。だから耐水性が大切なんですね。

接着剤は物によって対応素材も強度も使用方法も異なります。正しく使うことは作品の仕上がりのためにはもちろん、換気や養生の必要性など関係者を保護するためにも必要です。説明をよく読んで使いましょう!

必要に応じて養生や換気、手袋の使用などもお忘れなく。

STEP9 ウエストベルトに面ファスタ―を付けよう

ここまでくればあと少しです! ウエストベルトの両端に面ファスナーを付けましょう。

ベルトを接着する前につけてしまっても良いのですが、できるならこの段階で体に当てながら長さを調節するのをお勧めします。

ゴムバンドの伸縮率が物によって異なる、最終的に土台に重なる部分は伸縮しないので長さの予測が立て難い、ベルトが上下二段なのでそれぞれを体形に合わせるのが難しい、などがその理由です。

もしキャストの多い座組などでフィッティングしながらの制作が難しい場合は、こういった調整パーツを作っておくと便利ですよ。

黒いので見えにくいですが、面ファスナーをつける時は裏表を間違えやすいので注意しましょう。

短い場合はこちらのパーツをつぎ足し、長い場合は短く切ったり、折り返して縫い詰めるなどして調整しましょう。

STEP10 できあがり! 身に着けてみよう

おめでとうございます! これにてあなたのしっぽが完成です!

身につける時は、

・ボトムスの内側に装着。穴やスリットをあけておき、そこに通す。
・ボトムスの上から装着して、上から布やベルトを巻く。
・ボトムスの上から装着してトップスを長めにする。(ゆったりしたシャツや後ろにスリットのあるジャケット等が適しています)

など、ベルトや土台部分が目立たないよう工夫して装着して下さい。

ボトムスに穴をあける加工をする際は、リッパー(刃がついたトゲみたいな手芸ツール)を使用して、縫い目の糸を切って開くようにすると見た目も綺麗ですし、処理も楽です。また、その気になれば元通り縫い直すこともできます。(ただし手を入れる場合はその衣装の持ち主や管理担当者に必ず確認をしましょう)

装着したらワイヤーが入っている部分を整えましょう。根元と先端部分の形や角度を適宜整えたらOKです!

さいごに

注意点として、装着中は長いしっぽが大きく動くことになるので周囲には気を付けて下さい。舞台で使用する場合にはもちろん、ハロウィンなどのイベントで使用する場合も同様です。

特に舞台で使用する場合、暗転中や袖中など動線がシビアな場面では必ず片手でしっぽの先を持つようにして、しっぽが遊ばないようにしておきましょう。実際に身に着けてみると、思った以上に動きが出ると思います! もちろんそれが楽しい所でもあるので、安全に気を付けつつたくさん動いてみて下さいね。

骨盤の角度がつくだけでもそれに合わせて揺れるので、例えば、ダイナミックに歩けば大きくしなり、エレガントに歩けば優雅に揺れ、リズミカルに動けばピコピコ弾む……など、体の一部のように連動して動いてくれます。

ぜひキャラクターの動きにも拘って、お芝居やコスプレに合わせてみて下さいね!

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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy

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