2022年12月10(土)〜2023年1月10日(火)まで開催される<ルーシーフラワーズ・フェスティバル/大盤振舞>。
このフェスティバルの中で初配信される新作のオンライン公演「ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた 〜時代はもはや、医療崩壊ならぬ童話崩壊をも生み出すのだ!の巻〜」の出演者たちにインタビュー!
今回はアリスママ役を演じた大向しんじさんに演じた役や作品の見どころについて語ってもらいました。
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【12月10日〜1月10日】楽劇座10周年記念イベント「ルーシーフェスティバル/大盤振舞」オンラインで開催決定!
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あなたが演じたのはどんな役ですか?
僕の演じるアリスママは、ある川のほとりで営業している謎のバーのママさんです。もともと過去シリーズに配達屋のケンちゃんという役がいたんですが、彼が長年の夢を叶えて自分のお店を持った姿なんですよ。
アリスを名乗るだけあって、まさに無垢な少女のよう……というか今どき珍しいくらい純粋な人だと思います。作中でも人助けをしてますが、本人的には「当たり前のことをしてるだけ! 」なんです。
ただ間違っても自己犠牲の人では無いですね、基本的に自分中心の人です。それで他人への愛に溢れているから稀有な善性の持ち主には違いないのですが……。劇中でもヘンゼルちゃんの話を注意して聞いていると、アリスママの邪気の無い行動が今回のトラブルに一役買っている事に気付くはずです。本当、ごめんね?
衣装のポイントは?
胸元や髪に盛られたバラですね! アリスママのハートが内側からあふれてはち切れてしまったようなイメージなんです。
全体の色やボリュームのバランスを考えながら一つ一つバラを盛り付けました。理想の色が無かったところは、白いバラに自分で色を付けています。
細かいところだと、部分的に指が出ている変形グローブとか、ハートのペイントメイクとかも遊び心があってお気に入りのポイントです。
大枠が出来あがるとともにアリスママのイメージも出来てくるので、「こんな小物が欲しい」「こんなメイクがしたい」みたいな細部のイメージもしやすかったです。アリスママの衣装は完全新規の衣装で、お稽古と並行して制作した物だったので、本当に役作りの一部でした。
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役づくりで楽しかったことや、大変だったことを教えてください
アリスママの『ちょっと暴力的な純粋さ』みたいな、そういうところは演じていて楽しい所ですね。一例ですけど、僕個人で言えば「オカマ」って単語は普段あまり使わないんですよ、あまりいい使い方された憶えがないから。
でも「じゃあ悪い言葉か?」って言うと、本質は単語の是非より背後にある意識だと思うんですよね。
アリスママはもうめちゃくちゃポジティブにオカマオカマ言うんです!たぶん凄くカワイイ単語なんですよ、この人にとっては! 「マカロン」とか「クリスマスコフレ」みたいな。
出演していないシーンでも伝聞でアリスママの情報が出てくる場面があるのですが、そういう時でも人との接し方や行動なんかにアリスママらしさが溢れていて、カワイイからそれを拾って集めていたらそれがそのまま役になっちゃった気がします。
お稽古の思い出を教えてください
八の字眉幸子さんがコミカルな事をしている場面に重なる笑い声の収録があったんです。大人キャストは全員参加だったんですが、僕は「悪意が足りない」と何度かリテイクになってしまい……。
ルー役の五條なつきさんがお手本を演じて下さったり「こうしてみるといいかも」とアドバイスを下さったり……。(その節はありがとうございました! )その甲斐あって無事(?)『ルーさん直伝の悪意』がたっぷり入った笑い声になっているはずなので、ぜひ配信で探してみて下さい!
自分の役で好きなセリフは?
「またカラオケ行こうね」から始まる一連の台詞。その後に続く、カラオケでとある歌を知人に披露したエピソードは僕の実話です。
そして「だって困った時はお互い様じゃない? オカマの情けは国家の保証より手厚いの! 」もアリスママらしくて素敵なセリフです。ヘンゼルちゃんがアリスママの元に辿り着いた経緯を考えるとまた別の意味で味わい深くなります。
自分の役以外で好きなセリフは?
ヘンゼルが同級生の男子たちから揶揄われる時の台詞、「お前の母ちゃんコロッケ屋の親父とデキてんだろ?コロッケ買う時のアイコンタクトが普通じゃねぇってウチの母ちゃん言ってたぜ!」。
母とコロッケ屋のご主人……のことをヘンゼルに話す同級生男子……のことをルーに話すヘンゼルという階層構造と、それぞれの様子が「あぁ~……」となんとなくわかってしまう感じが大好きです。
あと自分の役絡みですが、ルーさんたちがアリスママを指して言う「限りなく女性的な~」から始まる台詞が本当に本当に大好きです。
あなたの役の見どころ(見てほしいところ)は?
アリスママは登場するよりも前に、他の人の「伝聞」という形で劇中で語られる場面が多いんです。
過去作に出ていた同一人物である「ケンちゃん」を知らない人は特に、「このちょいちょい出てくるアリスママとやらは何者やねん?」という認識になると思うので、個々の想像上のアリスママが形成される状態です。
そこにしれっと本人登場するので、そこは見どころだと思います。それまでに膨らんだお客様のイメージを裏切らない美貌でありますように!
あなたの役以外で楽しみにしているシーンなどは?
画面越しになってなお直視するには眩しすぎる、八の字眉幸子さんのステイホーム生活。媒体や世相が変わっても相変わらず騒が……お元気そうで素晴らしいです。
幸子さんと言えば、実は今回背景の八の字眉幸子さんのご自宅デザインも担当させて頂きました。幸子さんのイメージを膨らませつつ、小ネタもちらほらあるのでぜひ合わせてお楽しみ下さい!
楽曲シーンの撮影はどうでしたか?
劇場でやるのと違って、各役単独での撮影だったので最初はちょっと寂しかったですね。『天使の翼』では無意識に隣にいる八の字眉幸子さんにアイコンタクトを取ろうとして隣を見てしまいました。
あと単独での撮影だと舞台以上に細部が目立つと気づいたので、悪い意味での自分のクセが出やすい所には気を付けました。
劇場でも感じていたけど、(ちょっとゾッとするくらいの)哲学が感じられるのが楽劇座の楽曲シーンの魅力の一つだと思うので、気を付けることが増えてもそれは失われないように意識しました。
今回の公演で、1番好きな楽曲とその理由は?
相談者が悩みの本質に気付いた時に全体で歌われる『天使の翼』です。軽やかさと力強さの両方がある歌です。
僕はこれまで「ルーシー・フラワーズ」シリーズに 何回か出演させて頂いて、回によって異なる立場であることが多かったのです。悩める相談者、また別の悩める人、過去にルーたちに救われた人、ルーの相方、そして今回のアリスママ……。
楽曲の中でもこの歌は特に、ここでどんなカタルシスを得ているかが立場によって全然違っていて、でも歌っていることは一貫している……という所がとても好きです。
もちろん観ているお客様も独自の立場でこの歌を感じることになると思います。ぜひご自身の思うままに「天使の翼」を感じて下さい!
ご覧になってくださるお客様に一言!
ルーシー・フラワーズの世界は、夜に見る夢みたいに支離滅裂なようで示唆的だったり、かと思えばその逆だったりもします。オンラインになった事でご自宅からそこに繋がる扉が開くのはこのご時世ならでは!
ぜひ心も体も解放して、遊びに来てください。
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※舞台写真にはコロナ禍前の稽古時に撮影したものが含まれます。改訂前の脚本を元に撮影したものですので、今回公開される作品とは内容が異なる場合がございます。
執筆・撮影:編集部
(c)Rrose Sélavy