楽劇座『ルーシー・フラワーズ』シリーズにおいて、見どころの一つである衣装。
ここでは一人一人に注目して、衣装の魅力を解説していこうと思います。
第2回は前回に続き八の字眉幸子(演:大西佐依)さん、後編です!
前編はこちら▼
【衣装解説】『ルーシー・フラワーズ』のワードローブ <第1回 八の字眉幸子>①
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八の字コーデの推しどころ
前回で幸子さんの衣装をざっとご紹介しましたが、僕の一番の推しどころがまだお伝えできていませんでした。
八の字眉幸子さんで僕がなんとしても語りたいところ。……みなさん何処だかおわかりでしょうか?
—初登場時は長かった前髪?
―そばかすのメイク?
—自己愛にまみれた缶バッジ?
う~ん。まみれてますねぇ自己愛……(傷つき具合に舞台上での動きの激しさも感じられます)。ですが、違います。
あ! 季節やエピソードごとの特別な衣装でしょうか? イカした男装、浮かれた水着、つけ髭、つけ鼻、サンタ帽……これらの衣装は確かにどれもすさまじかった(いい意味で)ですね。ですが、違います。
……ずばり言います。
僕のイチオシは、スカートです!
古い?新しい?正体不明の合体スカート
もしかしたら「えぇ? スカート? 確かに凝ったデザインだけどこれのどこがそんなにイチオシ? ぶっちゃけ自己愛缶バッジの方がインパクトキッツくない?(いい意味で)」と思われるかもしれません。
確かに八の字眉幸子さんがいつも着ているスカートだし、ぱっと見ごくナチュラルな印象です。他のアイテムとよくなじむアースカラーとアンティーク風味のきいたデザインですね。
やはり18~19世紀風というか、その頃の女性がペチコートや外付けポケットを重ねたりスカートの裾をたくし上げているスタイルに似ています。
2017年の実写映画版『美女と野獣』でエマ・ワトソンさんが着ていた衣装も、こんな感じで外付けポケットがついていましたね。(そういえば幸子さんも音楽シーンで使うペンライトはここから取り出していますし、やっぱりポケット?)
ところが、です!
よく見ると幸子さんのスカートは一つ一つのパーツが不定形で異素材なんです。デザインとしての統一感はあるのですが、それぞれが別々に変な形をしているのです。
いわゆる『変形スカート』と言ってしまえばそうなんですが、それで片づけるには単純なアシンメトリーやレイヤードスカートではなく「なんか変」なスカートなんですよね。それに気付くとちょっと未来的なデザインにも見えてきませんか……?
さらにこの布たち、幸子さんが動くと個々に違う広がり方をして、とても目を引きます。これがまた幸子さんの妙な動きに合わせて立体的に動くんです!
初めて見た時はその『謎の集合体』ぶりに目が離せませんでした!
謎の構造の正体は?
そんな訳で、「どんな構造してるの?!」と長らく謎だったのですが……
実はこのスカート、キャミソールやワンピースやスカートや、複数の洋服が土台のスカートに縫い付けられているんです!
一見するとそう見えないけど、一つ一つのパーツがそれぞれ独立した服なんですね。
僕はこっそり勝手に『レギオン・スカート』と呼んでいます……!
(レギオン[英:Legion]:新約聖書に登場する悪霊。多くの魂の集合体。いつも叫び声を上げながら苦しんでいる)
ぱっと見は全体に馴染んでいるのに、動くと「なにか変」であることに気付くこのスカート。
一見「メルヘン世界の住人」のように見えつつ、動くほどに珍妙さがまろび出る八の字眉幸子さんにはまさにぴったりの衣装です!
オンライン公演では上半身がメインの画面になると思われますが、音楽シーンなどではきっとスカートも見える場面があると思います。
八の字眉幸子さんの愉快な動きと合わせて、ぜひ注目してみて下さいね!
八の字眉幸子のワードローブ・まとめ
八の字眉幸子さんのお衣装、いかがでしょうか?
こうして一人に的を絞って観察してみると、衣装の魅力というものに改めて驚かされます。
これは『ルーシー・フラワーズ』に限らずですが、衣装はビジュアル的な美しさという観点でももちろん楽しめますし、キャラクターの生活や精神性が表れている作品世界の一端として観ることでより一層楽しくなります。
衣装解説、次回は他のキャラクターに進みます。次回もどうぞご期待ください!
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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy
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