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【演劇の創り方/第2回】『ルーシー・フラワーズ』誕生の経緯とその劇作術について<後編>

【ものづくりの教科書】<演劇の創り方>では、楽劇座(がくげきざ)のテクノPOPミュージカル『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』(以下、ルーシー・フラワーズ)の創作過程を通して、演劇やミュージカルがどのようにして創られているのかをご紹介していきます。

第2回は「『ルーシー・フラワーズ』誕生の経緯とその劇作術について<後編>」(作・演出・音楽:関口純)をお届けします。

前編はこちら【演劇の創り方/第1回】『ルーシー・フラワーズ』誕生の経緯とその劇作術について<前編>

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御伽噺×時事ネタ

あともう2点、忘れてならないのが”御伽話の登場人物”と“時事ネタ”の存在。

この“時事ネタ”の使用を単に“ウケを狙ってやっている”と思われる向きもおいでかとは存じますが、実はそんな単純な話ではありません。

誰もが知っている御伽話を物語の背景とすることで、多くの説明セリフを省くことが出来るのは誠に有難いのです。

私は説明セリフが嫌いです。確かに、説明セリフを用いることによって役者の稚拙さを補うことは可能なのだが、それに甘えているにも関わらず、その事実に全く気付いていない頭の悪い役者を見るのが何よりも嫌いなのだ。だから説明セリフが最低限の使用で済む御伽話は格好の材料という訳だ。

で、この御伽話を“現代の私たちを取り囲む問題”として読み解く上で、これまた“時事ネタ”は誠に都合が良いのだ。

“現代の私たちを取り囲む問題”と言っても、そこに社会に対する深い洞察といった様なものは要らない。正確には「要らない」と言うか、「あっても理解されないだろう」といった方が正しい。そうしたものを演劇鑑賞に求める奇特な方はそうそういない。

大抵の人はエンタテインメントとして演劇を観にやってくる。だが歴史的に見れば、社会の状況を反映しない演劇の方が珍しいのではなかろうか。まあ、ここで演劇史について講義を始めてもしょうがないので、それはまた別の機会に譲るとして、兎にも角にも“現代の私たちを取り囲む問題”と“御伽話”は親和性が高いのだ。

人間が考えることなんて、何世紀ぐらいまたいだところでそれほど大して変わらない。だから御伽話の教訓は現在でも有効。

要するに“よく知っている御伽話”を通して“よく知らない私たちを取り囲む問題”を知るのだ。

ただ、“現代の私たちを取り囲む問題”とは言っても、政治、経済の最新動向を教科書的に扱ってもしょうがない。政治や経済も最大公約数はワイドショーの“時事ネタ”なのだ。

特定の人だけにしか分からないネタ・・・個人的には好きでちょくちょく入れ込むが・・・は、正確だろうが知的だろうが、現代日本のエンタテインメント的には御法度だ。そこで“時事ネタ”が有効となるのだ。

物語を現実とリンクさせる

“時事ネタ”を通して“御伽話”は現代とリンクする。こうして御伽話の主人公が持ち込む悩みは“現代の我々の悩み”そのものとなるのだ。

そして、ルーシーの2人によって御伽話の世界の住人たちは悩みを解決していく訳だが、その過程を通して“現代的な悩み”を少なからず抱えている(共有している)であろう観客も共鳴=カタルシスを得るといった構造を持っているのがルーシー・フラワーズの脚本という訳である。

執筆:関口純
(C)Rrose Sélavy

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