こんにちは、シンディこと大向しんじです。ここ『演劇小道具工房』ではお芝居で使える小道具のつくり方やこれまでに作ったアイテムの解説、それらに纏わるコラムなどをご紹介します。
今回は 「小道具部ありがちな失敗エピソード・その①~運搬~」をお届けです。
小道具部ありがちな失敗 ~運搬~
悩める小道具作家の皆さんこんにちは! 突然ですがこんな経験、ありませんか?
演劇小道具を作るにおいて「作り方」や「納期」というのは関門には違いありませんが、言わばそれは最初から見えているハードル。
その陰に潜んでノーマークになりがちな伏兵、それが「運搬方法」です。
小道具制作の環境は、座組によって様々だと思います。稽古場で作るのか、それ以外の場所で作るのか。稽古場の場合は時間外に置いていけるのかいけないのか。納品は送付なのか持ち込みなのか。車があるのかないのか……。条件の違いはあれど、劇場への搬入がある以上運搬する場面は必ずあります。
場合によっては梱包資材も小道具部で準備が必要になります。時間に余裕があれば十分に気を配って準備できるでしょうが、必ずしも余裕があるとは限らない(むしろえてして無い)ものです。
新作脚本の公演など、新規の小道具や扱ったことのない小道具がある時には特に注意が必要です。小道具リストを作る際に、頭の片隅で運搬についても意識しておきましょう。
また「大きい物」や「数の多い物」は特に運搬に気を遣います。そういった物ほど制作や管理に意識が割かれて運搬方法が二の次になりやすいので注意しましょう(戒め)。
アホみたいな話ですが、僕は昔「劇場入り目前になってやっと運搬に思い至り、手は黙々と仕上げ作業を行いながら、頭は運搬方法を模索してフル回転」という思い出しただけで胃薬が3杯はいけちゃいそうな経験があります……。(おかげで現在では早めに考えるようになりました)
おすすめの方法
さいごに。運搬や梱包をどのようにするかはアイテムや運搬の形態によって様々ですが、過去にやってみて個人的に便利だったものをご紹介します。
それは布袋を作ってしまうこと。安価な布や余り布を使って、そのアイテムがすっぽり入る袋を自前で作ってしまうのです。
基本的に「ただ袋状に端を縫って、持ち手などを付けるだけ」なのでミシンがあれば簡単にできます。(手縫いでもなんとかなります)
壊れ物や送付する場合はそこから更に箱などに入れることになりますが、その場合でもアイテムの保護剤として有用です。
何より、これがあるとすぐに包んで持ち運べる状態にできるので、劇場での搬入・搬出時がスムーズでした。公演後に倉庫などで保存する時にもそのまま使えるので管理・保護の面でもおすすめですよ。
また、ダンボールは梱包材としてとても優秀です。なんだかんだ頼りになるのはダンボールです。調達もしやすく、物品の形に合わせた加工も容易。耐久性や多少のクッション性もあり保護の面でも安心。困った時もダンボールで包むことができればとりあえず大丈夫。(壊れものの場合は新聞紙やエアーキャップなどを併用しましょう)
ダンボールくんは素材としてだけでなく、梱包材としても優秀なんです。(むしろそっちが本来の用途……? )ありがとうダンボールくん。
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運搬に限った話ではありませんが、やることが多いと大事なポイントが盲点になりやすいです。うっかりしないに越したことはありませんが、うっかりしちゃった時も落ち着いて考えれば、対応策は簡単なことだったりします。
「転ばぬ先の杖」は転んだ経験を素材にして作られるものです! 願わくばこの記事が参考になりますように。
そうしたら僕の「仕上げ作業をしながら運搬方法に頭を回転させたあの日の経験」もきっと浮かばれます……!
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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy