こんにちは、シンディこと大向しんじです。ここ『演劇小道具工房』ではお芝居で使える小道具のつくり方や、これまでに作ったアイテムたちなんかをご紹介します。
第18回は小道具解説! ビン入りドリンクのご紹介と、ラベルを作る時のポイントについてです!
栄養ドリンク“風”のビン
本日ご紹介する小道具は、こちら! 栄養ドリンク風のボトルです。
自信増強内服ドリンク“ソンダイン”、自尊心縮小内服ドリンク“イクジナ6(シックス)”、そして衝動開放内服ドリンク“マガサース”。……う~ん、効果が気になる品々ですね。当然ですが架空の商品です。
コンセプトはあくまでも栄養ドリンク“風”。それぞれ正面に見えるロゴのほか、側面にもそれっぽい(?)ことが書かれています。
図案をつくる時のポイント
栄養ドリンクに限らず、小道具でこういうラベルを作ることは時々ありますが、どうすれば「それっぽく」なるか結構悩むんですよね。折角なので今回は、こういう架空ラベルを作る時に僕が意識しているポイントをご紹介します。
元ネタをよく観察する
イメージの参考になる実在の物がある場合には、それをよく観察しましょう。今回の場合は市販の栄養ドリンクです。
どんな大きさの文字が使われているか、どんな色合いが使われているか、どんな配置でどんな事が書かれているか……。近いイメージのものがあれば、それらを観察するだけでもぐっとリアリティが上がります。
今回で言えば、側面の文字なんかお客さんにはまず読めません。せいぜい最前列の人に商品名がギリギリ読み取れるくらいだと思います。しかしなにも伊達や酔狂でこれらの文字を入れた訳ではありません。
栄養ドリンクの側面には成分や賞味期限や製造元などいろいろな事が記載されています。遠目に文字の判読はできずとも、何か書いてあればそれは客席からもわかります。小道具が目に入った時にそれがあるだけで「栄養ドリンク」としての実在性が上がって見えるんです。言い換えれば文章は何でもよかったわけですが、成分や注意書きを記載したのは遊び心ですね。
もちろん「それっぽいリアリティ」よりも「ストレートなわかりやすさ」を優先する場合もあります。例えば、リアルではないけど極端に大きな文字を使ってなるべくお客さんに判読できるようにした方が演出意図が伝わりやすい場合もあります。その辺りは作品や演出によるので臨機応変に行きましょう。
誰が使うどんな中身か考える
誰が使うどんな中身なのか想像してみましょう。今回でいえばこれらは全て市販のサプリメント風ドリンク。つまり劇中の時空で「買いたい!」と思う人に向けて商品デザイン担当者が知恵を絞ってデザインした商品パッケージです。
今回の場合は「自信増強ドリンクは自信のない人が効果を期待するような……」「自尊心縮小ドリンクは内に向かうような繊細なイメージで……」そんなふうに想像しながら考えました。ある意味この会社の商品デザイン担当です。
デザイン面で言えば、前の方のお客さんには商品名程度なら判読できる可能性があったのでそれも意識しました。
自分がお客さんで舞台を見る時に、こだわった美術とか見つけられるとちょっと嬉しいですからね。せっかくだからわかりやすいように商品名は見やすいサイズと色にして、文字が目立つよう他はなるべくシンプルにしました。
質感を意識
デザインができたらプリンターで印刷してボトルに貼ります。はじめからシールになっているラベル印刷用紙もありますが、今回は使いませんでした。
使ったのは薄手の光沢紙。ほら、栄養ドリンクのラベルってツヤツヤして光沢があるじゃないですか。なので今回はこちらに印刷して、両面テープで貼り付けました。
これも広い意味で「元ネタを観察」の一部です。デザインだけじゃなく質感も意識すると「らしさ」がぐっと上がります。
このやり方ならシール印刷用紙として市販されている物には無い質感も表現できます。たとえば和紙やクラフト紙を使ったり、両面テープじゃなく糊でわざと歪に貼ったりするとそれぞれ違った雰囲気になりますよ!
上記のポイントは小道具作成以外、例えば空きビンにラベルを貼ってインテリアにアレンジしたい時なんかにも応用できます。
「外国の船乗りが持っていたお酒のビン」「一人で住んでるおばあさんが自分で作った乾燥ハーブを入れるビン」「空を飛ぶ魔法のための油瓶だけど、魔法使いの社会ではごく一般的に流通している品でしかも使用期限間近のアウトレット品」……などなどイメージを膨らませると楽しいし、アレンジもしやすくなりますよ!
ほかにも舞台の差し入れや個人への贈り物でドリンクを渡す時にもおすすめです! 作品やその人にちなんだラベルがついていたら喜ばれると思います。
贈り物の場合は貼り付けてしまうと元の商品表示が見えなくなってしまうので、貼り付けるのではなく上から覆うように被せて、マステなどで留めておくのが安心ですね。
両面テープを使う時のコツ
最後にもう一つ、デザイン面ではなく作業面のポイントです! 両面テープを使う時のコツをご紹介します。
ラベルを貼り付けるのは瓶の側面。たいていの場合は曲面です。
印刷した紙も両面テープも、わずかとはいえ厚みがあります。それが2枚くっついた状態で曲面に貼り付けられると、テープやラベルが歪んでしまったり、元に戻ろうとしてフチの部分が剥がれて来たりすることがあります。特に歪みはシワになったり、縁からテープ部分がはみ出てしまうこともあるので注意が必要です。
なので両面テープを貼って切り出す時は、まず実際のフチから余白をとって切り出し、貼り付ける曲面に馴染むようにくるくる巻いてしばらく放置しておくといいですよ。
こうしておくと紙と両面テープに癖がついて剥がれにくくなりますし、ズレや歪みの調整もできます。
巻くときは折り目がつかないよう気を付けて下さいね。また、上の写真では上下左右に余白を残していますが巻かれて癖がつくと水平になる辺(ラベルの上下)が少し切りにくくなるので、上下だけは最初から線通りに切っておいてもOKです。
おまけ
ちなみにこちらが実際に使用したラベルの図案になります。
A4用紙のフチなし印刷で使用しました。実際にドリンク用ラベルを作る時のサイズ参考にして頂いても良いですし、そのままA4用紙に印刷して既存の栄養ドリンクのビンなどに貼り付ければ、なんとあなたのご家庭でも珍妙なドリンクが!
本番で使う小道具や素敵なインテリアを作る練習台としてぜひ「ソンダイン」や「イクジナ6」や「マガサース」を作ってみて下さいね! (※二次配布・商用利用・自作発言は固くお断りいたします。個人仕様の範囲内でご自由にお使いください。)
冷蔵庫とかに入ってるとちょっと楽しいので、皆様の生活が彩られることうけあいです! ぜひどうぞ!
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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy