「舞台メイク」と「普段メイク」の大きな違いは、舞台メイクでは役柄を表す必要があること。ただ「キレイに見せる」だけでなく、お客様に「自分がどんな役柄か分かるようにする」ことがとても重要です。
役柄を表すためのメイクテクニックはたくさんありますが、1番シンプルなところだと「色」を変えることでしょうか。
今回は舞台上での「オレンジ」と「ピンク」の使い分けについてご紹介したいと思います。
日焼けで身分を表す!?
伝統的な演目で身分の低い役を演じることになったら、チークやリップはオレンジにすることが多いです。そしてドーランの色は濃いめにして、日焼けした肌を演出します。
なぜかと言うと、昔は「労働者=外で働く=日焼けしている」からです。
反対に、身分の高い役を演じるときはチークやリップを青みのピンクにして、ドーランは淡め、日に焼けていないけど血色がいい色白肌を演出します。
これは「身分が高い=労働していない=室内で過ごすので日焼けしていない」からです。
わかりやすくするのが大切
もちろん、これらは現代の価値観から見るとナンセンス。肌の色なんて個人差があるし、身分や仕事、ましてや所持金には全くもって関係ありません。
セレブが海で遊んで日焼けした小麦肌はカッコイイ! でも、日焼け対策を万全にした透けるような色白肌にも憧れちゃう! と、それぞれに魅力がありますよね。
ただし、遠い昔、身分の違いがはっきりしていた時代の伝統的な演目をやる場合には、舞台に出てきた瞬間に登場人物の関係性やキャラクターが分かる方が、お客様にとっては親切です。
何不自由ない暮らしをしているお姫様役よりも、苦しい生活を送っている奴隷の方が健康的で肌つやがいいと、やっぱり違和感が出てしまいます。
お客様が一瞬で「こっちの人がお姫様で、こっちの人が召使いなんだな」と判断できるほうが、物語を追うのに迷子にならないので、役柄がわかりやすいメイクを心がけましょう。
メイクは日々研究あるのみ!
でも、現代が舞台の作品であれば身分の差の設定はそこまで気にする必要はないことがほとんど。特殊な設定でなければ、多くの場合は自分の肌の色や衣装に合わせてメイクを決めていいと思います。
共演者とのバランスや演出意図も関わってくるので、私は演目ごとにメイクも相談して決めるようにしています。そうすれば大きな間違いはないですし、カンパニー全体の統一感も出ますよね。
メイクに絶対はないので、その作品が、演じる役柄が魅力的になるように、そしてお客さまに伝わるように、日々研究あるのみです!
執筆・撮影:五條なつき
(c)Rrose Sélavy