この”オレンジ&黒パネル”のオリジナル・オデッセイは、20代前半ぐらいの頃、奇抜な広告が印象的な渋谷のヴィンテージシンセサイザー ・ショップにて購入。
確か今の半分ぐらいの金額だったと思う。
それにしても、これは本当にいい音がするのです。
このシンセサイザー、15~16歳頃に友人から「銀座のヤマハにあったよ」と聞きつけ、数千円しか手元に無いにも関わらず、思わず店に電話したのだが・・・ちなみに、その頃の巷の主流はYAMAHAのDX7。店頭品とは言え、とっくに倒産していたARP社のオデッセイが売れ残っていたのは奇跡。
関口少年「お幾らですか」
店員のお兄さん「50数万円(正式な値段は忘れた。60万円近くした筈)です」
関口少年「安くなったりとかしません?」
店員のお兄さん「それはその時(「買って頂ける時にご相談下さい」の意。)に・・」
もちろん買える訳もなく・・・
実は学校でフリージャズっぽい部活の創設を画策していた時期があり、その時にピアノの上にオデッセイなんてカッコいいなあとか思った訳です、はい。
まあ、その画策は見事失敗したのだが・・・。
ある日、音楽の先生に相談したところ、「合唱部に入ってくれたら考えてもいい」と、彼が顧問を務める合唱部に入ることを条件にされてしまった。もちろん、そんな恥ずかしいこと(合唱部諸君、ごめん!)は出来る筈もなく、私の部活動は幻と化したのであった。
部活未遂
と言うのも、私、部活動というものを1度も経験したことがないのです。
まあ、そんな話はどうでも良いのですが、兎にも角にもそれから7〜8年後、ようやくこのオデッセイを手に入れることが出来ましたとさ。めでたしめでたし。
このオデッセイも楽劇座のステージではお馴染みの機材。ある公演で、思いっきりグリッサンドをした際、ある一つの鍵盤だけが上方にピョコンと飛び出してしまいまうというハプニングが・・・。そのまま暫く使い続けていたものの、これがなかなか弾きづらい。どうしたものかと思い遍いていたところ、シンディ君(当サイトの執筆者の一人でもある、小道具なんか作らせたらピカイチの人物)の顔がふと浮かび、「ねえ、これ何とかならない?」などと軽めのプレッシャーなどをかけてみたところ、「ゴムのチューブとかあれば出来るかも」などという嬉しいお言葉。早速、劇場の倉庫からお望みのチューブを引っ張り出して、見事、応急処置に成功したという。ありがたや。
で、これも昨年、symplexの林さんのところにメンテナンスに出した際、劣化していた全ての鍵盤の部品を取り替えて頂き、抜本から問題を解決。という訳で、今はとても良い感じです。
もちろん、飛び出した鍵盤も元通り。皆(他の鍵盤たち)と一緒に”美しき横並び”で見事、綺麗に整列しております。
最近もレコーディングで使用しました。MIDIが付いてないので、もちろん手弾き。
そのままだと、周りのデジタル音への溶け込み具合には若干の難が無きにしも。ですので、ご利用の際にはイコライザー処理やエフェクターの類に少しばかり気を使った方が良いかもしれません。ノイズも勿論あります。
それはそうと、”オデッセイとレコーディング”と言えば、 因縁の ”レコーディング秘話”があります。
かつて、某レコーディングの仕事でちょっと揉め事がありまして・・・本来、アレンジの段階から「イントロの途中で良い感じで入ってくるフレーズは絶対オデッセイで録音しよう!」と決めていたのですが、気分を害してしまった関口青年、最後の一筆、ならぬ最後のオデッセイ(最後に録音予定だった)を一切弾くことなく、そのままレコーディングを終わらせてしまったという・・・若気の至です、ハイ。
その時のモヤモヤをきっかけに、ポピュラー音楽の世界とは少し距離を置こうと思ったりなんかして・・・
まあ、そんなことでもなければ、そもそも”演劇”にここまで深入りしていなかった様な気もします。
それが、良かったのか悪かったのかは分かりませんが・・・まあ、それが ”私のオリジナルな人生”なので、これでいいのだ!
さて、話変わって・・・
実は、数年前にKORGが再発した ARP ODYSSEY FS(Rev2. Ver.)も所有しているのだが、やはりオリジナルの方が ”いわゆるODYSSEYらしい音” がする様に思うのです。
ODYSSEYにしろPROPHETにしろ再発品もなかなか素晴らしいのだけれども、オリジナルのそれとは若干、音の質感が違う様に感じます。 もちろん、どちらが上とか下とかいう話でないのは言うまでもありません。
よく「オリジナルは30年以上も前の製品だから、部品の劣化もあって新品(再発品)とは音が違う。発売当時は多分、同じ音がしていた筈」という話を耳にしたりもしますが、それはちょっと違うかなあと思ったりします。と言うのも、私がオリジナルを購入した当時、すでに市場に新品は存在せず、当然、中古で購入したものですが、よく考えてみたら、その時期、新品で発売されていた頃からまだ10年程度しか経っておらず、尚且つ、購入当時の音と現在の音に特に変化があるとも思われないので、多分、これ(オリジナルと再発品)は元々、音の質感に違いがあるものと思われる訳です。
機会があればオリジナルにも是非触って頂きたい。
鍵盤なんかは再発品とは比べものにならないほど不安定だし、振動にも弱い。 だけれども、そこには何かがあるのです。
フィルターやレゾナンスあたりを弄ってみて下さい。何か感じるところがある筈です。
車好きな人が、便利で良い車が新品で幾らでも売っているのに、敢えてクラシックカーを購入したりするのと似ているのかも知れません。
なんか、楽器が生き物の様な感じと言うか・・・
まあ、良い音しますぜ。
執筆・撮影:関口純
(c)Rrose Sélavy