楽劇座『ルーシー・フラワーズ』シリーズにおいて、見どころの一つである衣装。
これまでは一人一人に注目して衣装の魅力を紹介してきましたが、今回は番外編として少し切り口を変えた解説をしてみたいと思います。
今回のテーマは前回から続き、ルー(演:五條なつき)とシー(演:齋藤蓉子)に学ぶ『おそろい感のつくり方』です!
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【衣装解説】『ルーシー・フラワーズ』のワードローブ <番外編 徹底比較! ルー&シーのおそろい感>
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『おそろい感』という概念
前回の衣装解説番外編では『おそろい感』がある2人の衣装の中でもそれぞれの個性が表れた異なる部分に注目しました。
劇中の楽曲『明日もハレルヤ』で「ひとりじゃなく ふたりでひとつなの♪ 」と歌われているように、衣装を語る上でもルーさんとシーさんの『おそろい感』はやはり大切なポイントです。
完全に同じアイテムはひとつも無く、むしろはっきり違う所もある。それなのにひと目で『おそろい』だと感じられるルーとシー。今回はこの『おそろい感』が一体なにから生まれるものなのか徹底考察していきたいと思います。
たとえばもし自分が誰かとおそろい風のコーデをするとしたら、どんな工夫をするでしょう? 色を合わせる? 素材を合わせる? はたまた「カーディガン」とか「襟つきシャツ」とか同じ種類のアイテムを使う?
でもルーとシーは見ての通り色は全く違いますし、素材感も異なります。アイテムの種類だって同じ部分も違う部分もありますね。それに「種類」っていうのもけっこう曖昧な基準です。カーディガンひとつとってもいろんな形状がありますし。う~ん。
……実は「少なくともここを押さえればおそろい感が作れる」という『おそろい感』のポイントがあるのです。
ルーシー・フラワーズの衣装を深く楽しみたいというあなたはもちろん。
ペア衣装のデザインに悩んでいるあなた。お友達とおそろいコーデがしたいというあなた。はたまた「しまった! 何気なしに着てきた服がたまたま先輩とガチ被りしてしまったわ! なんとかしてこの『おそろい感』を減らさないと……! 」 なんてあなたも、ぜひお試しください。
きっとお悩みを解決する参考になると思います。
※途中の考察をとばして結論だけ知りたい方は、上記目次から「おそろい感 その正体!」までお進み下さい。
ルーシー衣装を並べてみよう
まずは改めて2人の衣装を並べて見比べてみましょう。
共通点は、前髪を含めた髪型、ブラウスの衿、無地のカーディガン、柄物のボトム……といったところでしょうか。でもしっかり相違点もあるのは前回解説した通りです。
確かに「おそろい」に見せたい以上、共通点は大切だとは思うのですが……。単純に共通点を増やせば増やすほど『おそろい感』が上がるってことなんでしょうか?
さて、ここで思い出してほしいのが、以前ご紹介した八の字眉幸子(演:大西佐依)とアリスママ(演:大向しんじ)の衣装です。
シニョンの髪型、アンダーバストコルセット、ボリュームのある多層スカート、ラウンドトゥのヒール靴……。
意外と共通点が多い!! (自分で思わず「マジかよ……」と口に出ました) でもあんまり『おそろい感』は無いですよね。
さらに共通点を色から探せばもう1組。実はシーさんとケンちゃんはほぼ同色で構成されていますが、こちらもあまり『おそろい感』はありません。
なんにしても、ただ単純に共通点が多ければいいという話ではなさそうです。
これは一体どういうことなのでしょうか。共通点なんてそもそも関係ないんでしょうか。精神? 魂の問題? 長く連れ添ったご夫婦はだんだん似てくるとか聞くけどそういうこと?
……いいえ、違います。共通点は必要です。
ただしそれは何でもいいわけではなく、「ここを共通にすると『おそろい感』が生まれる」というポイントがあるのです。それさえ押さえれば、それまではおそろい感を生まなかった有象無象の共通点たちも一気におそろい感を高めてくれるのです。
ルーとシーにあって、シー&ケンちゃんや八の字眉幸子&アリスママにはない共通点。それは一体何なのでしょうか?
おそろい感 その正体!
ズバリお答えしましょう。ポイントとなる共通点は『色の濃さの配置』です!
……と言葉で言われてもわかりにくいかもしれません。そもそも「色の濃さって何?」という話になってくるので、ここでは一度わかりやすくイラストを使ってご説明しますね。
例に挙がった人たちの画像を並べて『彩度』を落としてみましょう。要するに、赤とか青とかいろんな色があると濃さが比べにくいので、いったん白黒にしてみます。
まずは例に上がった人たちに並んでもらって……。
彩度を落とすとこうなります。
ついでに柄の部分とかゴチャゴチャしているところは、濃淡をならすためにぼかしをかけて……
ここから、部位ごとに色を拾って並べてみると……?
おわかりいただけるでしょうか? 『おそろい感』がある人同士は、パーツごとに色の濃淡の配置が似ているんです。
先ほど挙げたルーシーの共通点に「髪型」「ブラウスの衿」「無地カーディガン」とありましたが、これらはほとんど部位の「形」の共通点。だから色の配置が重なりやすいんですね。
試しに幸子さんとアリスママの色味もそれを参考に、色の濃淡を加工してみると……?
おお! ちょっと生まれてる気がしませんか! おそろい感!
案外どこか遠いパラレルワールドのルーシー・フラワーズの世界では、この2人の物語が展開されているかもしれません。ちょっと覗いてみたい気もします。でもこの2人の所にお悩み相談とか果たして来るんだろうか。 ……やっぱりいつものルーとシーがいいですね。
おそろい感を生み出すコツ
ちょっと補足すると、僕らが日頃何となく感じているいわゆる『色の濃さ』とは、『明度』『彩度』と呼ばれる2つの要素が影響します。『明度』は明るいor暗い、『彩度』は鮮やかorくすんでいる、の指標ですね。
先ほどの説明ではわかりやすくするために白黒にしましたが、これは「彩度」を下げることで色みを無くし、「明度」だけ比較できる状態にしたのです。
でもたとえば「濃い赤」といっても「暗いくすんだ赤」と「鮮やかな明るい赤」は全く違うタイプの『濃い赤』です。
もし濃さを合わせてみても「思ったようにおそろい感が生まれないな~」という時にはその『濃さ』がどんなタイプの物かも意識してみるといいかもしれません。
さて、「ルー&シーの徹底比較」と「おそろい感のつくりかた」の2編でお送りしました衣装解説・番外編はいかがだったでしょうか。 お楽しみいただけましたら幸いです。
衣装のデザインに行き詰まっているあなた、お友達と双子コーデがしたいあなた、彼ピッピとさりげなくペアルックがしたいあなた、先輩との服被りをなんとしても回避したいあなた……そんなあなたのお悩み解決のヒントになりますように。
迷える人たちのお悩み事を解決するのが『ル-シー・フラワーズ』ですものね!
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執筆:大向しんじ
(c)Rrose Sélavy