みなさん、こんにちは! イラストレーターのめいるです。
この連載では『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』に登場する個性豊かなキャラクター達を、めいる独自の目線でイラスト&写真と共に解説しています。
今回ご紹介するのは、ルーとシーのお家にやってきた歴代のクライアントベイベー達(お悩み相談者)!
自由に生きるルーとシーのお家にはいろんな人物がお悩み相談にやって来ます。
個性豊かなキャラクター達が一体どんなお悩みを相談し、ルーシー達はどうやって解決していったのか……一緒におさらいしていきましょー♪
八の字眉幸子
記念すべき第一回目の相談者は、こちらの記事でもご紹介した八の字眉幸子。
CHECK
【キャラクター解説】陽気に狂気に乱デブー⁉︎唯一無二のお騒がせクイーン、八の字眉幸子編
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彼女もまた、「ルーとシーの家に来ればどんな悩みでも解決できる」という噂を頼りにやって来たクライアントベイベーの1人でした。
そんな彼女のお悩みは、
「大切な何かを何処かに落としてきてしまったようだが、何を落としたのかすらわからない」
……というものでした。いつの日か何かを失ったような、それはまるで身体の中心にぽっかりと穴があいたかのように冷たい風が通り過ぎるようになってしまった=自分でも何かよくわからない虚無感を感じるようになってしまったのだと。
ルーとシーは“もしかすると【忘却の岩】に何かを落として来たのかも! ”と考えます。【忘却の岩】とは、触れた人が「必要なし」と判断した記憶を無意識のうちに忘れさせてくれる、という岩。
しかし、ルーはこう言います。忘却の岩の作用で何らかの記憶を忘れて来てしまったとしても、それは決して悪い事ではなく、むしろ人生にとって必要な事である、と。
あまりにも矛盾にあふれているこの世の中ですべてのものを覚えているというのはあまりにも大変。だからこそ忘れる事がいかに大切か……。忘れるという事は恐るべきものではなく受け入れるものである事を切り絵を例えに出し、説明するのでした。
「切り絵って、切り抜かれて残った部分が絵なのか? 切り抜かれて何もない部分が絵なのか? 要するに正解は一体不可分って事。記憶と忘却はまさに一体不可分! 常に一緒じゃなくちゃいけないの。私達みたいにね! 」
これに納得した八の字眉幸子。見事心の穴を塞ぎ、自由を取り戻すことに成功したのでした。
人魚姫
前回自らの悩みを解決し、大いに感動した八の字眉幸子。これからは自分もルーシー・フラワーズの一員だと宣言し、頼まれていないにも関わらずクライアントベイベーを見つけて連れて来るという案内役に買って出ます。
そんな彼女が連れてきたのは、人魚のお姫様、ヴィクトリア・セイレーン・アンデルセン(通称ヴィッキー)でした。
偶然出会った彼女は海辺で涙をこぼし、今にも身を投げようとしていたのだと説明する八の字眉幸子。きっと深刻な悩みがあるはず……!
ところが、ヴィッキー本人によると「ドライアイ用の目薬をさして遠くを眺めていたところ、偶然貧血を起こしてしまいフラッとふらついてしまったところを、突然現れた八の字眉幸子に拉致されてきたのだ」と説明します。
完全に八の字眉幸子の勘違い!
……でしたが、ヴィッキーはルーとシーに唯一の悩みを打ち明けるのでした。
「私……悩みがないのが、悩みなんです! 」
それを聞いたルーとシー。【感傷という名の快楽がもたらす孤独な虚無感という名の木】にかぶれてしまったのでは? と思いつきます。
この木にかぶれると、全く心配のない事を心配するがあまりに自分で自作自演の悩みを作り出し心酔してしまうという症状が出るのだとか……。
例えば、「なぜ我が家は火事じゃないんだろう? 」と全くもって心配する必要のない疑問を持った挙句自ら火を放ち、「家を失う事に苦悩する自分」をつくり出す事で安心してしまうという……まさに「火のない所に煙は立たぬ」を体現している恐ろしい病気なのだそう。
そんな複雑な病ですが治療方法はいたって簡単。とにかく「気にしないこと」!
要するに要らぬ心配はする必要なし、というとってもシンプルな答えに一同、納得(笑)最後に処方箋がわりのおまじない「魔法の呪文」をかけてヴィッキーのお悩みも無事解決したのでした。
赤ずきん①
またまた八の字眉幸子がお節介を焼いて連れて来たのは、赤い頭巾を被ったまだ幼い女の子。幸子曰く「開かず欽ちゃん」という名前だそうですが……?
彼女は、おばあちゃんのお見舞いに行く途中、ヨンミュージックプロダクションの大神(オオカミ)さんにそそのかされ、気づけばアイスクリーム屋とドーナッツ屋で寄り道&爆食いをした挙句、迷子になってしまった……というのです。
どうやら【消費という名の甘い誘惑がもたらす都会の埃】アレルギーになってしまったようね、とルーシーは推測。
その後、女の子の名前は「開かず欽ちゃん」ではなくみんながよく知る「赤ずきんちゃん」だった事が判明! 赤ずきんちゃんなら、「夢見がちで幸福な残酷という名の森」通称「ともしびの森」の近くにお家があったはず……と家の所在が分かり喜ぶ一同。
しかし、喜んだのも束の間……。
「このまま帰ればオオカミに食べられる事も漁師に助けられる事もない。私はお母さんの言いつけを破ってしまった悪い子……」と赤ずきんちゃんは自分を責め、後悔という名の迷宮に入り込んでしまったのでした。
「人生には回り道だって時には必要! 赤ずきんだからってオオカミに食べられる必要なんてないんだから! 」とルーは励まします。
さらに、漁師に助けられる事でしか幸せを感じられないなんて冗談みたいな不幸体質であると指摘。その言葉で赤ずきんも目を覚ますのでした。
「童話の世界のストックホルム症候群に、まどわされちゃダメ。あなたは自由なのよ! 」
赤ずきん②
こうして、無事お家に帰った赤ずきんちゃん。……でしたが。それからしばらくして再びルーシーのお家に訪ねて来ました。
トレードマークの赤頭巾をかぶっているものの、バブリーな衣装とメイクで、前回来た時とはガラリと風貌が変わっていました。
お家に帰ってからの事を尋ねると、お母さんは娘との再会を喜ぶどころか赤ずきんちゃんを責め立ててきたと話します。
赤ずきん母「どうして食べられてこなかったの? あなたが赤ずきんちゃんであることを放棄したおかげで童話の世界での私の存在意義まで失われてしまった。赤ずきんが赤ずきんじゃなくなったら、私はただのお母さん。私の居場所を返して! 」と。
母親からの酷い言葉を受けた赤ずきんちゃんはきっと落ち込んでいるはず……! 同情しオイオイと泣く八の字眉幸子でしたが、赤ずきんちゃんはきっぱり言い切ります。
「私、童話の世界に思い入れ無いんで! 」
その言葉に拍子抜けする八の字眉幸子をよそに、赤ずきんちゃんはとっても清々しい表情。自分を助けてくれた「マッチ売りのババア」のお話を聞かせます。
まだ幼い頃、売れなければ父親に折檻されるという恐怖心から大晦日にマッチを売り歩いていたマッチ売りの少女。しかし、彼女は気づきます。「今どきマッチなんか誰が買う? 売れなきゃ折檻するような父親なんかろくなもんじゃない! そんなヤツに義理などありゃしねえ! 」と。そして童話の世界を飛び出したマッチ売りの少女は、ライター売りに転職。自由と引き換えに歳を取る事を選び、マッチ売りのババアとなったのでした。
「私の顔に刻まれたこの皺は自由の象徴なのさ! 」
マッチ売りのババア同様、童話の世界から飛び出し、自由を手に入れた赤ずきん。そんな彼女が今回ルーとシーの元に訪れた理由とは……?
「実は何かまだ今ひとつしっくりきていなくて……お2人にアドバイス頂ければと! 」
お悩みを聞き、赤ずきんちゃんの全身をチェックするルーとシー。
「確かにどこか違和感が………あっ! 」
ルーがある事に気づき、頭に残っている「赤頭巾」を取ってあげます。
「要するに、赤ずきんのアイデンティティにまだ縛られていたって事ね! 」
こうして童話の世界から飛び出していった赤ずきんちゃん。
「如何なる名前も、私の人生を拘束する事はできません! 」と笑顔で帰って行きました。
次回予告
いかがだったでしょうか?
童話のキャラクター達の個性豊かなお悩みと、それを華麗に解決するルーシー達の物語。現代の私達にも共感できる悩みがたくさんあってとっても面白いですよね!
この物語を紡ぎ出せる脚本家の関口純先生の頭の中は、本当に凄い……! と記事をまとめながら感じた次第であります。
クライアントベイベー編は長くなってしまったので次回へ続きます!
白雪姫に桃太郎に浦島太郎……。中にはトランスジェンダーなお悩みを持つキャラクターも?
どんなお悩みが飛び出すのか、次回もお楽しみに♪
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写真提供:楽劇座
執筆・イラスト:めいる
(c)Rrose Sélavy