以下は、AppleMusicのBioに掲載されているQ&A。AppleMusicからの質問(Q)と関口純による回答(A)の完全版となります。ちなみにAppleMusicのサイトでは字数制限のため、回答の全ては掲載されておりません。補足の意味も込めて全文をこちらに掲載させて頂きます。
これを読めば、「ルーシー・フラワーズ」の楽曲をより深く楽しめるかも……!?
Q&A
Q1.あなたの最も初期の音楽の思い出を詳しく説明してください。
祖母がプロのギタリストでしたので、クラシックギターの音を聴いて育ちました。私自身は幼少よりピアノ、高校生になると音大教授に師事しクラシック音楽の作曲を学びました。一方、小学生の頃、母親にymoの第2回ワールドツアー(1980年12月の日本武道館公演)に連れて行ってもらい、翌年の矢野顕子”また会おねツアー”も観に行きました。以降、私はシンセサイザーの魅力にすっかり魅了されてしまいました。
Q2.Apple Music で最も好きなアルバムのトップ3は何ですか?またその理由は何ですか?
※トップ3と言われてしまうと困ってしまいますが、”最近、比較的よく聴いていたもの”という意味で。
・イエローマジックオーケストラ(YMO)『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』
これは先の問いでもお話しした小学生の頃の衝撃に由来します。今ではスピーカーのチェック等、私の中での基準値としても機能しています。小学生だった私は、その革新的なサウンドはもちろんですが、坂本龍一氏が叔父・叔母と高校の同級生だったこともあり、その”アーティスト性”にも強いシンパシーを持ったように思います。
・ムーンライダーズ 『青空百景』
20代の頃、初めてプライベートスタジオを持ちました。その隣室が先日お亡くなりになられたムーンライダーズのキーボーディスト岡田徹さんでした。岡田さんからはCDを貸して頂いたり、一緒にコーヒーを飲んだりして、音楽へ取り組む姿勢のようなものを色々学ばせて頂きました。その気さくな人柄は本当に素晴らしいものでしたが、そうした人柄はその音楽にも現れているように思われます。実はこの『青空百景』、お恥ずかしながら最近まで聴いたことがありませんでした。今更ではありますが、各メンバーのソングライティングのセンスが見事に発揮されている名盤だと思います。ちなみに、他のアルバム(『DON'T TRUST OVER THIRTY』)の収録曲ではありますが、岡田さん作曲の『9月の海はクラゲの海』は名曲だと思います。
・カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団『ベートーベン交響曲第4番』
カルロス・クライバーのコンサートを生で聴く機会は世界中を視野に入れてもそう多くは無かったと思いますが、この4番は7番とのプログラムで十代の頃、東京文化会館の来日公演で聴いた思い出の1曲です。ロベルト・シューマンはこの曲を「2人の北欧神話の巨人の間に挟まれたギリシアの乙女」と評したとされますが、クライバー指揮の4番を聴けば、まさに”言い得て妙”ではないでしょうか。
Q3.Apple Musicでお気に入りの曲を見つけて、その特別な点を教えてください。
武満徹『虹へ向かってパルマ』(エサ・ペッカ・サロネン指揮ジョン・ウイリアムス&ロンドンシンフォニエッタ)
武満徹は20世紀の最も偉大な作曲家の一人ですが、そうした人物の初演に度々接することが出来たことは私の財産です。この『虹に向かってパルマ』は、私の記憶が正しければ、サントリーホールで岩城宏之指揮メルボルン交響楽団によって日本初演されたのではないかと思います。作曲を勉強し始めたばかりの”10代の私”はもちろんその会場にいました。その際にロビーで武満氏に握手してもらったのは一生の思い出(宝物)です。確かNHKの収録映像には客席にいる少年時代の私の姿がチラリと映っていたような・・・。
さて、肝心の曲についてですが、一言で言えば「本当に美しい曲」です。オーボエ・ダモーレとギターの音色、それらと溶け合うオーケストラの手法(書法)は見事。この頃の武満氏の曲は初期の前衛的なものとは異なり、いくらか調性的ですらあり、そうした傾向は映画音楽で培われたオーケストレーションで彩られています。『虹へ向かってパルマ』の日本初演に接した私は早速この曲のスコアを購入し、何処へ行くにも肌身離さず持ち歩き、暇さえあれば至る場所でそのスコアを読んでいました。チェレスタを用いたオーケストレーションを真似した記憶があります。
Q4.これまでのキャリアの中で最も記憶に残ることは何ですか?
2001年、作曲・編曲・プロデュースを担当していた某レコーディングで、午前10時から翌朝の9時まで、休憩なし、23時間ぶっ通しのレコーディングを経験したことがあります。某放送局の別館にあるスタジオでしたが、昼間は業界人で賑わうそのロビーも、深夜は緑のぼんやりとした非常灯の灯りだけ。スタジオ内に鳴り響く音楽と、そこから扉一枚隔てただけの深夜のロビーの静けさは、独自の神秘的なコントラストを描いていました。
Q5.アーティストまたはバンドとしてやりたいことリストに残っているものはありますか?
2016年に演劇作品としてのスタートしたルーシー・フラワーズですが、音楽劇として上演された楽曲だけでもすでに数十曲ありますし、これから新曲も創っていく予定です。音楽劇の上演も含めればライブもすでに数多く経験しておりますが、音楽ユニットとしてのルーシー・フラワーズの世界、その世界観をどのようにステージに反映していくのかは今後の楽しみの一つでもあります。要するに、全てはこれから始まります。
アーティストインタビューはこちら!
【アーティストインタビュー:関口純】ルーシー・フラワーズ 1st.シングル『MÄRCHEN』配信開始!
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質問:Apple music
解答:関口純
(c)Rrose Sélavy