さてさて、今回編集部に届いたのは道後ビール・・・なになに「日本最古の温泉の一つ、道後温泉を楽しんだ後にぴったりなクラフトビールをご紹介いたします」とな。
温泉といえば・・・実は、正直なところ温泉とはほぼ縁がない。と言うか、そもそも旅行というものすらほぼ体験したことがない我が人生。少なくとも15歳以降、新宿の自宅から泊まりがけで離れた覚えがない。あっ、そうだ! そういえば京都で開催された映画祭に行った帰り、新幹線の終電がなくなって仕方なく?一泊したっけ。そうだそうだ、思い出した。まあ、これ一回じゃないかなあ・・・。
普通なら「泊まるだろ?」と思われるような距離へ出かけても、必ず終電で帰ってくるような人間なのです。要するに家、ないしは家時間が好きなのだ。旅行にお金を使うぐらいならば、そのお金でお気に入りの椅子の一つでも購入したいタイプ。
“道後ビールのアリス”体験記
よく考えてみれば、子供の頃から我が家に人を呼ぶのは大好きだったが、自分が他人よその家に行くのはあまり好きではなかった。それは現在、大人になっても変わらない。安全に勝るもの無し。そう、私にとって自宅は安全の象徴なのだ。
この“安全”という文脈で言わせていただけば、温泉など言語道断!そう、「“他人と一緒に裸になって入る露天風呂”など危険がいっぱい!」とでも言わんばかりに敢えて避けて通って来たようなフシすらある。
で、そんな私が「温泉の湯上がりビール?」しかも「新宿の我が家で呑むの?」などと思わないでもないが、そんな私であっても“温泉の湯上がりビール”なるイメージ、その“魅惑的な響き”には決して抗うことができず・・・そう、気付いた時には、いわば“兎を追いかけてしまうアリス”と化した私がそこにいたという次第だ。という訳で、私は「あっれ〜!(落ちる際の叫び)」ってな具合で、“不思議の国”ならぬ“道後温泉の湯上がりビール”の穴に落ちて行くのであった。
そう、以下は私の“不思議の国のアリス”、もとい“道後ビールのアリス”体験記である。
<アルト>
サッパリとした水の如く。口の中では炭酸、喉越しは善良なる水(非炭酸系の趣き)といったイメージ。 カラメル系の苦味はあるがサッパリとした呑み心地。
<スタウト>
いわゆる黒ビール。カカオ90%のチョコレートみたいな苦味。カカオ72%のチョコレートと合わせてみたが、違和感なく呑めた。また、無塩ナッツ(アーモンド&カシューナッツ)にも合わせてみたが、こちらもなかなか良い感じ。ギネスのようなクリーミーな濃厚さは無いものの、それは敢えての仕上がりだろう。この辺りはシリーズ通してのコンセプトなのだろう。まさに湯上り系ビールの名に相応しく、味はしっかりしているにも関わらずサッパリとした飲み口&喉越し。
先ごろ開催されたパリ五輪の際には、次の日の予定もかえりみず、連日、深夜の生中継に興じたものだが、「あの時にこれがあったら良かったのに!」と出会った時期が悔やまれてならない。そう、謳い文句に偽りなしの"風呂上がりに呑みたいビール"なのである。
<湯あがりIPA>
実際に湯上りに呑んでみたのだが、「ああ、なるほどね」といった感じ。納得! 第一印象は爽やか。かと言ってフルーティという訳でもないのが特徴。お味&香りはいわゆる昨今流行りのクラフトビールな訳だが、喉越しが軽いのです。これはこのシリーズ全てに共通なのだが、かと言ってアルコール分が弱いという訳でもない。これがこのシリーズの特徴だったりする。なんせ5%ですから。まあまあ酔えるのですよこれが。
<ケルシュ>
少し甘味を感じるフルーティな味わい。かと言って決して甘過ぎるという訳でもないお味。お酒(ビール)初心者女子にもオススメだが、年季の入ったおじ様だって普通に呑めちゃう万能選手といった趣き。いわばハズレの無いクジ引きみたいなイメージ。
<ヴァイツェン>
香りと喉越しにバナナの風味を感じるのは私だけだろうか?いずれにしろフルーティな味わいの一品。若干クセのあるビールなので、シリーズの中では比較的好みが分かれるところかと思われるが、ラインナップとしては妥当なお味と言って良いだろう。
道後ビール体験後記
おうち酒場化計画的には、"道後温泉の素"的な入浴剤を用意し、日曜日に早めの入浴。風呂上がりの和室で「サザエさん」を横目に"お疲れ様でしたビール"なんて感じで平成生まれのおじさん初心者が昭和の風情を愉しむにはもってこいのビールかと思われる。
個人的には・・・正直なところ、道後温泉なるものに行ってみたくなった。新宿で呑んでもこれなんだから、現地で呑む“湯上がりビール”はさぞかし格別なものだろう。
今の時期からだと、雪の降る中、露天風呂に浸かって(もちろん一人でね!)「ちょっと、のぼせちゃったかな?」かなんか言いながら、湯上がりに呑むビール。なんて至福のとき! まあ、そもそも露天風呂なんて入ったことない訳だから、あくまでもイメージ、イメージ! ね?!
道後ビール
今回ご紹介したのは愛媛県松山市の水口酒造が製造する地ビール「道後ビール」(715円/湯上りIPAのみ770円)。仕込み水に清酒「仁喜多津」を生んだ熟田津の良水を使い、麦芽やホップの厳選から製法まで、長年の清酒づくりの技を生かし醸造しているそう。
目指したのは温泉街ならではの「湯上がりに美味しいビール」。ケルシュは「坊っちゃん」、アルトは「マドンナ」、スタウトは「漱石」、ヴァイツェンは「のぼさん」と道後温泉を舞台にした夏目漱石「坊っちゃん」の登場人物にちなんだ別名も。
お取り寄せしてご自宅でお風呂上がりに飲めば温泉気分が味わえるかも!? いつか道後温泉を訪れたら、ぜひ湯上がりに味わいたいものです。
関口 純/音楽家&劇作・演出家
大衆社会という名の戦場で、その“住処”を鉄壁の要塞と化すことに情熱を注ぎ、かつ、“一人呑み”という名の作戦会議において“食”という名の世界地図を広げることを以ってして戦士の休息とする文士、またある時はミューズの女神に色目をつかいながらもバッカスの宮殿で音楽を奏でる宮廷楽士を下野して地上に舞い降りた吟遊詩人。
芸術を生業とする一家に生まれ、幼少よりピアノ、作曲、演出などを学ぶ。その後、日本テレビ音楽(株)顧問(サウンドプロデューサー&事業開発アドヴァイザー兼任)、楽劇座芸術監督、法政大学地域創造システム研究所特任研究員など。音楽から演劇、果ては研究活動に至るまで「止まれば死ぬ」を人生のコンセプトに“常に”吟遊詩人的人生の真っ最中。
※本文中の価格は全て税込です。
※お酒は20歳になってから。適量を楽しみましょう。
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