昭和ドラマ、特に70年代の作品の面白さってのは、一つにはフュージョン、すなわち融合にあるのではないかと思います。
なんの融合なのかと言えば、新劇系俳優、喜劇人、アイドルといった人たちによる“プロの技術”の融合です。
杉村春子、奈良岡朋子、渡辺美佐子、樹木希林、宇野重吉、田中邦衛、小沢栄太郎、東野英治郎、仲代達矢、石立鉄男、中村雅俊、松田優作etc.といった新劇出身の俳優による“伝統的な手法”をベースとした確かな演技力、伴淳三郎、由利徹、森繁久弥etc.といった喜劇畑で培われた職人芸、郷ひろみ、西城秀樹、浅田美代子、岸本加世子、桂木文、白石まるみetc.といったアイドルが“アイドル”だった時代、すなわち“プロのアイドル”によるアイドル性(ビジュアル含む)、そういったものが融合されて一つの世界観を形成している強烈なオリジナリティ
TBSの『ムー一族』に至っては、そうした“プロの技術”の融合に“素人性”の融合といった過程がさらに追加されます。ミュージシャンやスタッフを俳優として起用したり、視聴者を参加させるなどの素人性です。
テーマ音楽がクリエイションによるフュージョンミュージックというのも象徴的で、さらに横尾忠則氏の手による強烈なビジュアルイメージも相まって、より編成の大きなフュージョン作品が生まれています。
『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』といった作品のプロデューサー・演出家の久世光彦氏の知性、いや、敢えての“知性の裏返し”のような脱構築的表現は今観ても「新しい!」のです。もしかすると今だから「新しい!」のかも知れません。
まあ、今だったらコンプライアンスとやらで放送されることすらないでしょうが・・・再放送されるとしても「不適切な表現を含みますが、制作時の意図を尊重して〜」とかなんとか注意書きを入れての再放送になることでしょう。しかも地上波ではなくCS、BSあたりで・・・
個人的には石立鉄男主演の一連のシリーズが好みです。富士真奈美、樹木希林といった芸達者に大原麗子、酒井和歌子、榊原るみといった“いわゆる綺麗どころ”を配した“あの感じ”がなんだか落ち着くのです。“THE昭和・東京の街並み”といった感じの風情も相まって、日本人が紛れもなく日本人であった頃の日本が慕ばれるのです。そこにあるのは、私がまだ幼かった頃の東京ですが・・・
ちなみに冨士真奈美さんといえば“コミカルなおばさん”といった印象をお持ちの方が多いかと思われますが、実のところ、稀に見る日本人離れした美人であることをここで力説しておきたいと思います。実際、元々はヒロイン女優だった訳ですし。本当に思いっきりの良い女優さんです。
さて、こうして改めて過去の作品を観かえしてみると、一見ふざけた様なことをやっているように見えても今とはずいぶん“奥行き”が違うなあと・・・それもこれも“プロの技術”に裏打ちされているが故というのがよく分かります。
明日の文化村サロンでは、こうした話をさらに掘り下げられれば良いなと思っています。
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こちらの内容は5月21日(日)20時〜の配信となります。
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執筆・撮影:関口純
(c)Rrose Sélavy